誠三の手記 その3

「そう、ゲームはすでに始っているのだし、ご見物人も集まりはじめているし、ゲームを提案したのは彼女のほうであることは誰の目にも明らかであるし、イベントの少ない日常を生きる者としては、これほどエキサイティングな祭はないのだが、惜しむらくは、彼女の放つ言葉のひとつひとつが極めて凡庸であり、その刃がぼろぼろだってとこで、果たして、卑しくも職業で文章を操っている者を相手にして、彼が本気で反撃するなり、萎縮して姿を消すなり思っていたのであろうか、まあ、そんなことは、それこそゲスの勘ぐり、半可通の知ったかぶりに過ぎない態度ではあるので自重、所詮は、人生そんなもの、道化になれないならば奴隷として生きるしかないのが世の常ならば、存分に愉しみながら、このゲームの行方を見守りたいのは人情。」

「ゲームは、恐らく二通りの終末をあらかじめ準備している。」

「彼女じしんが、自分の放った最終兵器の凡庸さに気づき、パニックを起こし、周囲の精神たちが、暴走する凡庸な精神の自称「疵」を舐めるのに終始するか、突如としてナニもなく終わるか、である。いずれにせよ、修復不可能な局面までコマを進めてしまったのは、北朝鮮・・・いや、彼女のほうなので、殺すの殺さないのという言葉をいともカンタンに軽々しく操り、「私がどれだけの思いで生きているかも知らないで」なんていう誰もが一般的に考えている凡庸極まりない叫びをを恥も外聞もなく駄々っ子の如くなりふり構わず吐き続けることが、自分を支える唯一の根拠であるような、無職者の、次の攻撃の弾がナニもないのだということくらい、果たしてご見物人の皆さまもご理解いただいていることでしょうから」